AID発現がDLBCLの予後に影響する
DLBCLの予後に関する論文。AIDはsomatic hypermutation (抗体を作るときに可変領域に変異が入ること)やclass switch recombination (可変領域がそのままでIgMがIgGなどに変化すること)に関わる酵素で、京大の本庶先生の仕事の一つなのは有名です。B-cell lymphomaの発生原因の一つに、class switch recombinationのエラーが関わっていることが示唆されていて、whole-genome sequenceの結果からはAIDがリンパ腫発生に重要な役割を持っていると思われています。
DLBCLに限らず、AIDはFLなどの様々なB-cell lymphomaに発現していますが、DLBCLでAID高発現によるsomatic hypermutationの異常活性化が起きているという報告は今のところありません。今回の論文では、免染でAID発現を調べて、予後に関与しているかというのを論じています。
患者は2004年から2012年に京大で診断されたDLBCLの患者71人で、R-CHOPを1st lineで使用された患者です。それらの検体を免染や細胞表面抗原解析を行って、統計学的処理をしています。
結果は40.8%でAID陽性で、基本的には細胞質に陽性。でも数%は核に陽性でした。AIDの発現の有無での患者のbackgroundには有意差なし。他の免染の相関ですが、IRF4 (要はMUM-1), c-MYC, Ki-67 (MIB-1 index高値), non-GCB (Hansで), IgMと相関していました。
前述の通り、普通のB cellでは、class switch recombinationはIRF4の活性化によっており、またそれはAIDで誘導されます。DLBCLでも、IgM陽性DLBCLにおいてAID陽性とIRF4は相関しており、IgG/IgA陽性DLBCLでは相関していませんでした。
で、主題の予後との解析ですが、5y PFSも5y OSもAID陽性群の方がちょっとだけ悪いけど、有意差までは生じないという結果に。ただし、IPI 3-5の予後不良群に限れば、PFS, OS共にAID陽性群が予後が悪いという結論になりました。
また、IPI 0-2の低い群では、逆にAID陰性の方が予後が悪い傾向が見られています。それ以外は、AID発現の高い方が有意差を持って悪いのは、CNS再発のリスク、IgM DLBCLに限った再発後の予後、救援療法への反応性でした。
最後の方の解析である救援療法への反応性については、大分nが少なくなってしまったし、ダメだった解析も多いので、どこまでこれがちゃんと信用できるのかはちょっと微妙かな・・・。IPI 0-2群では逆に予後が良さそうに見えるのも、ちゃんと説明していないし。Leukemia & Lymphomaに載るような論文かなあ?