ML論文ななめ読み

malignant lymphoma関連の論文を中心に、適当に斜め読みしています。twitterでも関係ない医療ネタを時々つぶやいています(@lymphoma17)

FLは30ヶ月CRだとほぼ健常人と同じ予後

www.ncbi.nlm.nih.gov

FLはindolent lymphomaの代表例ですが、初期治療開始して30ヶ月の時点でCRだったら、スペインの健常人とOSは変わらないというお話です。

FLに対しては、最近ではRBを行うところも増えていますが、古くからはR-CHOPが行われています。CR率も高くstandardの治療ではありますが、その一方で再発される方も割といまして、再発される方の多くは繰り返し再発する事も多いです。海外ではシグナル伝達阻害薬など新規薬剤も出ていますが、毒性も強いため、予後が良い患者は除外できた方が良いです。また、類似の研究を見ると、大体治療して2年までの経過が参考になりそうです。そのため、治療開始からカウントして、30ヶ月の時点までCRだったという基準を設定して、解析をしたのがこの論文です。

患者はスペインの2施設にてFL grade 1, 2, 3aと診断された263人です。条件としてはGELF criteriaで治療が必要なのが必須条件ですので、経過観察のみの患者は入っていません(治療が必要になったら、その時点で組み込まれますが)。CR30とは、治療開始からカウントして30ヶ月後のCTでCRかどうかです。なので、治療後にPRだったけど、rituximab maintenance中にCRになれば、それでもOKです。

f:id:lymphoma:20190402172652p:plain

治療経過

治療経過は上の通り。このCR30に至った患者に有意に特徴なのは、stage I or II、節外病変なし、bulky病変なし、骨髄浸潤なし、血清β2MG正常、low risk FLIPIでした。またOSが有意に低い群は、60歳以上、ECOG PS >1、節外病変あり、LDH/β2MGのどちらかが高値、high risk FLIPIでした。

CR30群の188人のうち、31人はその後再発しています。救援療法をした患者のうち70%は再度CR/CRuに至ることができて、なかなか再発後の治療成績も悪くありません。10-y OSは87%にもなり、非CR30群より有意に良いですし、スペインの一般人のOSとなんら変わりはありません。

という結論ですけど、再発するにしてもCRを2年維持するかどうかで全然予後が違うとか、2年後までCRなら健常人と変わらないとか出てるので、それほど新規性がある話題ではありません。むしろ、R-CHOP後2年ぐらいCRならほぼ一般人の死亡率と変わらないというのがほぼ確定した話題になったということでしょう。ということは、あらかじめCR30が分かれば、R-CHOP療法以上に強度を上げる必要はなく、むしろ検討すべきは強度を下げる方向になるのでしょう。

ただ、問題なのはあらかじめCR30に至る患者がさっぱり分からないことです。一応予後良好なのはある程度抽出はできますが、残念ながらある程度止まりです。もう少し見通しがつかないと…。特にDLBCLに転化する例などは、FLIPIからも組織型からも判定できていません。治療はかなりいいところまで行っているので、後は患者群の同定が必要なんですよねー。