ML論文ななめ読み

malignant lymphoma関連の論文を中心に、適当に斜め読みしています。twitterでも関係ない医療ネタを時々つぶやいています(@lymphoma17)

DLBCLはEBV+だろうが免疫不全だろうが予後に関係ない (白人では?)

www.ncbi.nlm.nih.gov

高齢者だけじゃないのが分かったので最近elderlyが取れちゃいましたが、EBV+ DLBCL-NOSというのがあります。病理的には普通のDLBCLみたいにsheet状に増えるときもあれば、ぱらぱら散在することもありますが、いずれにしろ腫瘍細胞はEBER陽性になります。一般的に治療反応性が悪く、予後不良と言われています(日本でも東海大からの論文があります)。

ただ、予後が悪いと言っているのは東洋とラテンアメリカからの発表ばかりで、USAではそこまで悪くもないと言われています。そもそも有病率も西洋の方が低く、extranodal NK/T cell lymphoma, nasal typeでもそうですが、白人はEBVのlymphomagenesisに対する抵抗力みたいのがあるのかもしれません。

また、EBVに注目すると、移植後LPDみたいにはっきりした免疫不全に伴うものもあります。MTXが有名ですが、薬剤などの免疫抑制薬が、EBV+ DLBCL発症のリスクとなることも分かっています。免疫不全が予後を悪くするのかも、はっきりしたことは分かっていません。

ということで、アメリカにおいて、EBV+ DLBCLが予後が悪いのか、それと同時に免疫不全が予後を悪くしているのかを検討したのがこの論文です。

2002年から2012年にかけて集められて1081人のDLBCLの患者です。ただしmicroarrayに十分なサンプルがないということなどで、最終的に解析されたのは362人です。DLBCLでもprimary CNS lymphomaやprimary cutaneous lymphoma, primary mediastinal large B-cell lymphomaは除きます。免疫不全の定義は「先天性、もしくはMTX, CPA, azathioprine, hydroxychloroquine, 抗てんかん薬、抗TNF抗体を含む生物学的薬剤、6ヶ月以上続くPSL 20mg/day相当のステロイド使用歴」となっています。HIV感染は除かれています。抗てんかん薬がなぜ免疫不全?と思いますが、量的にも質的にもリンパ球が下がるという報告があるようです。

EBV+と診断されたのは、16人(4.4%)だけですが、IPIや年齢などのback groundは基本的にEBV-とは差がありませんが、有意に骨髄浸潤が多く、non-GCBの割合が高いです。また、CD30の陽性例も多かったとのことです。

また免疫不全に関しては、EBVの患者も含めて39人(10.8%)いまして、一人がCVID以外は何らかの免疫不全を起こす薬剤です。こちらもまたback groundは免疫正常患者と比べて差がありませんでした。

で、問題の予後ですが、EBV+もEBV-もOSはほぼ変わりなし(129 vs 143ヶ月)。EFSもほぼ変わりなし(129 vs 139ヶ月)。免疫不全に関しても、OS (129 vs 143ヶ月)、EFS (103 vs 138ヶ月)共に有意差なし。

medianのOSもEFSも同じくらいで、eventが生じたらすぐ死んじゃうの?という疑問がありますが、北米ではDLBCLがEBER陽性でも免疫不全の側面があっても、何も変わりないという結論でした。先ほど挙げた日本の論文以外にも韓国やペルーでは予後不良のようなので、人種差なのでしょうか。この論文のpatient profileには人種が書いてなかったので、断定は出来ませんけど。