ML論文ななめ読み

malignant lymphoma関連の論文を中心に、適当に斜め読みしています。twitterでも関係ない医療ネタを時々つぶやいています(@lymphoma17)

tisagenlecleucelをR/R DLBCLに

www.ncbi.nlm.nih.gov

国内でもニュースになっていたので、今回はコレ。CD19に対するCAR-T療法で、B-ALLにも使えるけど、ここではDLBCLへの論文。

sigle group, open-label, multicenter, international phase2試験。患者は成人の再発難治DLBCLだけど、FLからのtransformやdouble/triple hit lymphomaもOK。ただし、PMBL, CNS infiltration +, allo後、CD19をtargetとした治療歴のある人はダメ。治療はrituximabとアントラサイクリンを含む2nd lineまではやってダメということが前提。APBSCT後の再発でも良いし、APBSCT不適でもOK。

まずはWBC > 1000であれば、Flu + CPA or Benda.のいずれかでリンパ球減少をさせてから、tisagenlecleucelを一回投与という治療プロトコル。登録から投与までのmedianは54日で、90%が1-3ヶ月の間に投与されていると書いてある。

primary end pointはbest overall response rate (要するにPR + CRの割合)で、52%。responseがあって12ヶ月後のPFSは65% (CRだけに限ると79%)と、悪くはない。ただ副作用がそれなりに激しくて、grade 3-4のだけでも、1ヶ月以上続く血球減少が28%、cytokine release syndrome 22% (最低限入院が必要で、感染、臓器障害が重症など)などとなかなかキツい。

Figure 2を見ると、前治療の多い少ないでどっちが効きやすいという傾向が出ていないけど割と前治療が少ない人が多いこと、腫瘍量が多い人は効きにくそうなこと、再発はともかく難治例は効きにくそうなことが分かる。実臨床で困ってる症例は「再発した」だけではなく、「薬が効かない/効いても一時的」な症例である訳だから、実際に使ってみると、多分印象として受ける成績はもっと下がるんじゃないかなと思う。それに、副作用も結構大変で、APBSCTが適応ではない人に、果たして使えるのかと言われると、結構難しい。しかも、使うことを決めてから2ヶ月ぐらいは死にそうもなく、下手したら移植より大変でも頑張れそうな患者ということも含めると、夢の薬ではないと思う。ノバルティスは売りたいだろうけど、投与条件を医師側がちゃんと考えないといけないだろうなぁ。

良い点はdouble/triple hit lymphomaでも成績が変わらなそうな所かな。その点は正直期待してしまうなぁ。